NHK未契約で裁判に訴えられる確率と高額受信料
NHK受信料について解説するサイトを見ていると「NHKと受信契約を結ばずに粘っていても、NHKが裁判まで起こしてくる確率は低いので大丈夫」と紹介するケースがあります。確かにNHKから未契約について裁判で訴えられることは多くはありませんが、確率は低いながらも本当にNHK未契約で裁判に訴えられることになって判決が出てしまうと受信料請求が高額になる可能性が高いのでした。
NHK未契約で訴えられる裁判は576件
NHK未契約や受信料を巡っては、過去争われた裁判の判例で重要な意味を持つのが、2017年12月に最高裁大法廷が出した判決です。この裁判では、放送法に規定された受信料制度が憲法に照らして問題あるかどうかが大きな争点でしたが、最高裁大法廷が出した判断は「憲法に違反しない」というものでした。
一方で、NHKが未契約の視聴者に受信契約を強制的に結ばせるためには「裁判で争ったうえで受信契約を結ぶという命令を出してもらう必要がある」という判断もありました。これは、争われた裁判がNHK側が勝手に未契約の視聴者と受信契約を結び受信料を請求していたことが、そもそも裁判にまで発展した原因だったためです。
このため「NHKから裁判をおこされない限り未契約を続けても大丈夫」「裁判をおこす確率などほとんどない」といった説がネット上では流れています。NHK未契約で訴えられる裁判の数はNHK自身が発表しており、2022年6月末までで576件(事業者を除く)です。
NHK未契約で裁判に訴えられる確率
NHKの推計によれば、2021年度末に受信契約対象となる世帯は約4666万世帯、契約数が約3796世帯となっています。これは、本来は受信契約が必要なものの未契約の世帯は870万世帯あるということ。この数字を先ほどの裁判件数の576件と比較すると、NHK未契約で裁判に訴えられる確率は0.01%以下しかありません。
しかし、仮にNHK未契約で裁判で訴えられる場合、受信契約を結んだうえで滞納するより多額の受信料を支払わされる可能性もあるのです。先ほど紹介した最高裁大法廷判決では、未契約の視聴者がいつから受信料を支払うべきかも争われましたが、その判断ではNHK受信料には事実上消滅時効が成立しないとなっているのです。
消滅時効とは、未払いの代金や未返済の借金については、一定期間が経過すると売主や貸主が持つ請求権(債権)が消滅するというものです。現在の民法では、消滅時効は発生してから10年、または行使することができると知ってから5年となっています。
NHK未契約で訴えられる裁判に負けた場合
未払いの代金や未返済の借金について、買主や借主が消滅時効を主張するためには、「時効の援用」という手続きが必要になるものの、手続きさえ行えば通常は消滅時効以前の債権は消滅します。ところが、先ほどの最高裁大法廷判決では、消滅時効の期間はNHK受信契約を結んだときから計算するとなっているのです。
つまり、NHK未契約で訴えられる裁判で敗訴した場合、判決後5年たたないと消滅時効が成立しないため、過去受信契約を結ばずテレビを所有していた期間のNHK受信料まで全部支払う必要があるのです。ちなみに、先ほどのNHK未契約裁判で敗訴した視聴者は2006年3月~2013年5月の受信料支払いを命じられています。
最高裁大法廷判決には、時効の援用が成立しないのはおかしいという反対意見も付いているため、再び最高裁大法廷までNHK未契約を裁判で争えば覆る余地はあります。とはいえ、最高裁まで争うコストを考えた場合、NHKが映るテレビを所有しながらNHK未契約を続けるのは裁判で訴えられる確率は低いとしても得策ではありません。
ラジオライフ編集部
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