NHK受信料は民放でも使えるようになっていた?
テレビ視聴者からNHKが集めた受信料は、これまでNHKの運営にのみ使われることになっていました。しかし、法律上NHKの番組を見るかどうかに関係なくNHK受信料を支払う仕組みであるならば、NHKだけでなく民放局に受信料を一部回すべきではという意見は根強くあり、先日の放送法改正により一部実現することになったのです。
NHK受信料を民放局の運営にあてる議論
じつは、NHK受信料を民放局の運営に一部あてるべきでは…という議論は放送法が制定された1950年当時の国会でもありました。というのも、限られた放送用周波数の割り当てを受けて利用する放送局には、NHKだけでなく民放局にもある程度の公共性が求められるためです。
とくに、地上波民放テレビ局については「放送法関係審査基準」という総務省の訓令のなかに、教育番組を10%以上、教養番組を20%以上編成するという規定があります。また、ラジオを含む地上波民放局には、電力会社や鉄道会社などと同様に外国人による持株割合について制限が設けられています。
しかし、放送法制定時にNHK受信料を民放局へ一部活用するという意見は結局採用されず、NHK受信料はNHKの運営のみに支出することになりました。その後、1966年に国会に提出された放送法改正案では、NHKと民放が共同で世論調査を行うといった内容が盛り込まれたものの、審議途中で廃案になってしまいました。
民放との共用中継局にNHK受信料を使う
その後、テレビの普及やBS放送の開始などによりNHKは受信料収入を伸ばし続ける一方、民放局はバブル崩壊以降収益を徐々に減らして行くことになります。とくに、2010年代以降はネットでの動画視聴が民放テレビ局のCM単価を押し下げ、経営を苦しくする大きな要因となっているのです。
なかでも、視聴エリアが1都道府県に限られる地方テレビ局の経営は厳しく、エリア全域をカバーするために多数の中継局を設置・維持する負担が重くなっています。そのため、2023年6月に地方局の負担を軽減する内容を含む放送法改正が成立。現在は施行を待っている状態です。
改正後の放送法には、地上波放送についてNHKと民放の両方を中継する会社の設置を認め、この会社にはNHKが過半数の出資を行うことが定められています。ただし、すべての中継局がNHK・民放の共用になるわけではなく、共用した方が効率が高いと総務大臣が認める「指定地上基幹放送地域」に限られます。
NHK・民放の中継局共用については、現在総務省の委員会でその方法を検討中で、中継局までの伝送路をIP化することと合わせて議論が続いています。とはいえ、今後NHKの資金を一部利用して民放の中継局が運営されることは確実な状況です。
ラジオライフ編集部
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