NHK割増金が2023年3月以前は対象外となった理由
この4月から、テレビを所有・設置しながらNHKと受信契約を結ばない世帯へ、NHKが割増金を請求できる制度がスタートしました。しかし、NHKが割増金を請求できるのは4月以降の受信料のみで、それ以前に何年も未契約だったとしても3月以前は割増金の対象外。このような仕組みになったのは、ある法律上の原則が理由なのです。
法令不遡及でさかのぼり適用できない
新しい法令が制定・施行されたり、変更が施行される際には、施行前にさかのぼって適用されない「法令不遡及」という原則があります。法令不遡及はとくに刑事法で重要視される考え方で、さかのぼって刑事罰が適用できてしまうと、実行当時に違法でなかった行為も新しい法律で罰せられることになるためです。
日本の場合、法令不遡及の原則は刑事法以外でも採用しており、身近なケースでは運転免許が挙げられます。古い制度で取得した運転免許は新制度にも引き継がれるため、例えば2007年6月1日以前に取得した普通運転免許でも、現在は中型免許が必要な一部自動車を運転可能です。
ただし、例外的に法令をさかのぼり適用する場合もあって「遡及適用」と呼ばれ、参議院法制局のWebサイトでは「国民の利益になる場合や、国民の権利義務に影響がない場合」に許されると説明しています。ただし、遡及適用を行うためには法令で経過規定を定めることが必要です。
NHKの割増金の対象は4月以降分のみ
それでは、NHK受信料の割増金は遡及適用の対象となるのでしょうか。2023年3月31日以前はNHK受信契約内で不正に受信料支払いを免れたケースに限り規定。しかし、2023年4月1日の改正で一定期間未契約を続けていた視聴者へ範囲を拡大した割増金が明記されました。
このような場合、2023年3月31日以前の未契約期間について割増金の対象とするためには、放送法の付則にそのことを経過規定として盛り込む必要があります。ところが、2022年10月1日施行の改正放送法にそのような経過規定は存在しません。
そのため、仮にNHKが受信契約に割増金の遡及適用を盛り込んだとしても、実際にNHKが裁判を起こされると契約無効と認定される可能性が高いのです。この点をNHK側が認識していたことから、NHK受信契約の経過規定には、受信料の割増金は2023年4月以降分の受信料のみを対象とすることが盛り込まれています。
ラジオライフ編集部
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