NHK受信料を義務化する「特殊な負担金」の根拠
テレビを持っている家庭であれば、NHKを見るかどうかに関係なくNHKと受信契約を結び、契約にしたがいNHKへ受信料を支払う…というのが今の法律上のルールです。じつは、NHK受信料は税金でも視聴料でもない「特殊な負担金」というのが政府やNHKの考え方。これは60年以上前に行われた会議の影響がいまだに続いているのです。
NHK受信料と許可税の二重の負担だった
現在のNHK受信料制度は、1950年に放送法が制定された時点で導入されたものでした。放送法制定以前はラジオを所有すること自体が政府の許可制で、NHKへ聴取料を支払わないと所有許可がおりませんでした。さらに、ラジオ所有を許可されると国(逓信省)へも許可税を支払うという、二重に負担が発生する仕組みだったのです。
新たに制定された放送法では、ラジオ所有は原則自由となり、許可税は廃止されました。しかし、NHKへ支払う聴取料については受信料と名称が代わったものの、視聴者がNHKと受信契約を結び受信料を支払うという形で、NHKの運営費用を視聴者が負担する仕組みが維持されたのです。
とはいえ、視聴者がNHK受信契約を結んだうえで契約内容に従い受信料を支払うという仕組みはわかりにくいものでした。そこで、1962年に放送法を大幅に見直すために郵政省が委員会を設置。その「臨時放送法制調査会」においても、NHK受信料制度をどう捉えるかは議論になりました。
NHK受信料を義務化した改正案は廃案
臨時放送法制調査会では、NHK受信料以外にもさまざまな議論が行われ、1964年9月に最終報告書となる「臨時放送法制調査会答申書」が発表されました。じつはこの答申書で初めて、NHK受信料の位置づけを「(NHKの)維持運営のための『受信料』という名の特殊な負担金と解すべきである」という考えが示されたのです。
一方で、答申書はNHKと視聴者が受信契約を結び受信料を支払うという仕組みについては、「契約」という名称が誤解を招くことから受信料支払い義務を規定すべき…という提言も行いました。これを受け、1966年の通常国会に受信料支払い義務化を明記した放送法改正案が提出され、審議が行われるはずでした。
ところが、放送法改正案は審議を始める前段階から与野党からさまざまな反対論が続出し、1966年6月に衆議院で審議が開始されたものの会期切れで廃案になってしまいました。その後も、1980年にNHK受信料の支払いを義務化する放送法改正案が国会に提出されたものの、審議自体が行われず廃案となっています。
そして、NHKがNHKプラスなどでインターネット配信事業を拡大するなか、NHK受信料をどのように位置づけるかを再検討する議論が、総務省の委員会で2022年9月からスタート。この委員会では、2023年夏までにとりまとめを公表予定としており、どのような内容になるのか注目です。
ラジオライフ編集部
最新記事 by ラジオライフ編集部 (全て見る)
- 2台1組の白バイは新人研修中でじつは警戒が必要 - 2024年7月27日
- 値下げしたNHK受信料より沖縄はもっと安かった - 2024年7月27日
- U-NEXTでオトナ系動画の見放題「H-NEXT」とは - 2024年7月26日
- 警察のNシステムに撮影されずに移動する裏ワザ - 2024年7月26日
- カスハラで逮捕される可能性のあるNGワードとは - 2024年7月26日