オービスで速度違反を無闇に取り締れない裏事情
高速道路や幹線道路でスピード違反を取り締まる「オービス」は、ある程度重い速度超過でないと取り締まらないといわれています。単にスピード測定などの技術だけを考えれば、軽い速度違反であっても取り締まることもできそうですが、じつは警察にはオービスで無闇に取り締まれない事情があるのです。

オービスはデジカメで枚数に制限なし
走行する自動車のスピードを自動で測定、速度違反車を発見した際にはカメラで自動で写真撮影して取り締まる「自動速度取締装置」は、通称・オービスと呼ばれています。オービスという呼び方は、日本で最初に導入された東京航空計器製の自動速度取締装置の商品名に由来するものです。
初期のオービスは、撮影に白黒フィルムが使われていたため定期的に回収や交換が必要でしたが、現在稼働中のオービスはデジタルカメラとなり、フィルムの交換作業は不要。撮影した画像も、通信回線を利用して中央処理装置へリアルタイムで送られています。
デジタルカメラで撮影枚数に制限がないとなれば、その気になれば設定次第で速度違反と無関係にすべての自動車を撮影することも可能になってしまいます。これを警察に許してしまうと、プライバシーの侵害となり大問題です。
このため、警察には業務で写真を撮影することについて制限がかけられています。オービスによる取り締まりも例外ではなく、過去にオービスで取り締まられた人が刑事裁判で争った際に、オービスの写真撮影とプライバシーの関係が問題になったケースもあるのです。
オービスは軽い違反を取り締まれない
警察の写真撮影に関しては、どのような場合に許されるかの判例で「現に犯罪が行なわれもしくは行なわれたのち間がないと認められる場合であつて、しかも証拠保全の必要性および緊急性があり、かつその撮影が一般的に許容される限度をこえない相当な方法をもつて行なわれるとき」とされています。
この判例をオービスでの取り締まりに当てはめる場合、スピード違反車以外を撮影することは当然ながら、「その撮影が一般的に許容される限度をこえない」という点も問題になります。つまり、悪質な速度超過でないと、オービスによる取り締まりはできないことになります。
実際、オービスに直接関係する判例では「設置場所にもよるが、制限速度を多少超えた程度にセットして写真撮影することは相当ではないものと言わなければならない」となっているため、軽い速度違反はオービスで取り締まることができません。
とはいえ、スピード違反が悪質かどうかは、単純に超過スピードだけで判断できないことも事実。最近、制限速度30km/hの生活道路で、可搬式オービスを用いた30km/h以下の軽い速度違反の取り締まりが相次いでいるのは、生活道路での速度違反は30km/h以下でも十分悪質だと警察が考えている証拠といえるでしょう。

ラジオライフ編集部

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