B-CASカード廃止でテレビが普通に映る日は来る?
デジタル化したテレビを見るために必要な「B-CASカード」については、これまでさまざまな欠陥が明らかになっています。そのため、4K放送では新しい仕組みのACASを採用。地デジ放送では、B-CASカードが不要となるRMPが使えるようになりました。それでは今後、B-CASカードが廃止される日は来るのでしょうか。
B-CASカードのコピー制限を無視する
B-CASカードは2000年12月1日のBSデジタルの本放送開始にあわせ導入され、当初は有料チャンネルの視聴制限にのみ使用されていました。ところが、無料チャンネルの録画が海賊版としてネットにアップされたことがきっかけとなり、B-CASカードの仕組みを拡張してコピー制限に利用する検討が始まりました。
2004年4月5日から、BSデジタル放送だけでなく地上波デジタル(地デジ)放送でもB-CASカードによるコピー制限がスタート。以降、BSデジタル放送、地デジ放送ともすべてのチャンネルでB-CASカードを装着していない状態のテレビなどでは、視聴自体ができなくなってしまいました。
しかし、B-CASカードのコピー制限には欠陥があることが、その後の事件で次々と明らかになっていきました。まず問題になったのは、2007年初頭から販売された、B-CASカードのコピー制限を無視するチューナー「フリーオ」の登場です。フリーオの存在は当時、総務省の審議会でも議論となりました。
B-CASカードに代わる視聴制限の仕組み
B-CASにとって深刻だった事件は、2012年から流通しはじめた不正改造されたB-CASカード、通称「BLACKCAS」を巡るものでした。BLACKCASを利用すると、BSデジタル放送や地デジ放送だけでなく、有料チャンネルの110度CS放送が無契約で視聴可能となり、有料チャンネルにとっては大問題だったのです。
こうした事件にくわえ、B-CASカードの発行・管理がビーエス・コンディショナルアクセスシステムズによる一社独占であることも問題化。そのため、総務省もB-CASカードに代わる新たな視聴制限やコピー制限の仕組みを検討することになりました。
その結果、2012年10月からは地デジ放送には「RMP」、2018年からは4K放送を対象にした「ACAS」が導入されます。RMPを管理する地上放送RMP管理センターは地デジ放送の全局、ACASを管理する新CAS協議会協議会は4K放送を行うテレビ局などを会員とする一般社団法人としてそれぞれ設立されています。
B-CASカード廃止の検討は先送りされた
ACASはB-CASの上位互換となる規格のため、ACAS対応のテレビなどはB-CASで放送されている番組の視聴が可能です。そうなると、B-CASカードはいずれACASに置き換わると考えられそうですが、いまのところそのような予定はありません。
その理由は、BSデジタル放送をACASに切り替えてしまうと、これまでのB-CASカードを利用していたテレビではBSデジタル放送がまったく視聴できなくなるためです。また、地デジ放送に導入されたRMPには視聴制限機能がないため、有料チャンネルが数多くあるBSデジタル放送にそのまま導入することはできません。
総務省が2018年から2019年にわたり行った検討会でも、B-CASカードの仕組み自体は現状も機能しているため、廃止ではなく今後ACASやRMPの普及を見てB-CASカードをどうするか再検討するという結論になりました。そのため、当面はB-CASカードのスロットを搭載したテレビは引き続き販売され続けるでしょう。
ラジオライフ編集部
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