国際VHFの通信は呼び出しチャンネルから開始
国際VHFの通信は、すべての船舶に受信を義務づけている、呼び出しチャンネルの16chから始まります。「チャンネル16」や「16チャンネル」と呼称される16ch(156.800MHz)からは、他の船舶を呼び出す交信が聞こえてきます。コールサインは船名です。国際VHFの魅力を詳しく見ていきましょう。
国際VHFは16chで相手を呼び出す
国際VHFは16chで相手を呼び、応答があったところで、両船は通話用のチャンネルに移行して、具体的な通話に入ります。これは他のおもしろ無線には無い、国際VHFならではのシステムです。
即座に通話チャンネルに移るのは、呼び出しチャンネルを早く空けることで、他船が呼び出しをできるようにするため。さらに16chは遭難・緊急チャンネルを兼ねているからです。すべての船舶が16chを常時受信しなくてはならない理由は、こんなところにあるのです。
国際VHFでは通話チャンネルに移行する時もルールがあり、通話相手によって使用するチャンネルが変わります。これは通話チャンネルの混雑を緩和させるため。国際VHFの無線機にはテンキーが搭載され、チャンネル番号を入力して通話チャンネルに移っていきます。
国際VHFの通話チャンネルの順位
国際VHFは船舶同士で行う「船舶相互通信」だけではなく、港湾を管理する海岸局と船舶の間で行う「港務通信」の2つに分かれます。そして各通話チャンネルには、使用順位が決められているのです。使用順位は10位以下まで決められていますが、日常では使っても3位くらいまでです。
港務通信に開局してくるコールサインは、「○○ポートラジオ」「○○保安」「○○港内保安」「○○マーチス」「○○ハーバーレーダー」といったものがあります(○○は港湾名)。船舶は港内に入ると「○○ポートラジオ」「○○保安」「○○港内保安」へ、航路や入港の予定などを連絡します。
湾内や水路を航行する船舶の動向をレーダーで監視している「○○マーチス」「○○ハーバーレーダー」は、航行情報の提供や必要に応じて航行制限などを実施します。通話チャンネルが多めに割当てられているのは、1度に多数の船舶と交信できるようにするためです。
国際VHFで海難事故の相互連絡
また、変わったところでは、70ch以下のチャンネルが海運会社に割当てられて、カンパニーラジオのような使われ方をしていたり、87chと88chはAIS(船舶自動識別装置)のデータ送信波として使用されています。
そして海難事故が発生すると、国際VHFは目まぐるしく動き出します。各種の海岸局から、付近を航行する船舶に注意喚起をするのはもちろんですが、消防艇と海上保安庁の巡視船が出動すると、現場での相互連絡波として国際VHFが使われることもあるのです。
その他、海上自衛隊の護衛艦や海上保安庁の巡視船が開局したり、深夜に下位のチャンネルで外国船員が母国語でおしゃべりをするのが聞こえてきたりと、奥が深い国際VHF。主要な港であれば交信も頻繁なので、いろいろな内容が受信できます。(文/小林照彦)
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ラジオライフ編集部
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