NHK受信料裁判における最高裁判決の問題点とは
NHK受信契約について、NHKの番組を見られる家は結ばないと危険…という記事をWeb上で数多く発見できます。もちろん、これには根拠があり、過去に最高裁がNHK受信契約を結ばなかった期間については時効を認めず、テレビ設置時にさかのぼり受信料支払いを命じる判決を出しているためです。なぜこのような判決が出たのでしょうか。
NHK受信料裁判で最高裁大法廷が判決を出した
NHK受信契約・受信料についてもっとも影響力を持つ判例が、2017年12月6日に出された最高裁大法廷判決です。この判決が重要視されるのは、最高裁が判決を出したことに加え、5人の判事で審理される小法廷ではなく、15人の最高裁判事全員が参加する大法廷で審理が行われた点にあります。
最高裁が大法廷で審理する事例は、重大な憲法判断が必要なケースに限られます。それだけに最高裁大法廷の判決は重く、今後行われるNHK受信料裁判でも、地裁や高裁で最高裁大法廷の判断に従った判決が出続けることになるのです。
この最高裁大法廷判決で一番の注目は、放送法におけるNHK受信契約に関する規定の合憲性で、さまざまな理由から放送法の規定は憲法違反ではないという判断でした。そして、もう1つ重要なポイントとして、未契約だった期間のNHK受信料に消滅時効が適用されるかどうかがありました。
借金や未払い金の時効は通常は5年
消滅時効とは、民法にある契約に関する規定で、借金や未払い金などの債権について、一定期間を過ぎると貸付先や未払い先などの債務者へ請求できなくなるというものです。現在の民法では、消滅時効が適用される期間は債権者が債務者へ請求できることを知ってから5年、または10年のうち短い方となっています。
実は、この裁判において当初、消滅時効は争点になっていませんでした。というのも、消滅時効は自動的に成立せず、NHK受信料の未払いであれば視聴者側がNHK側へ「消滅時効の援用」という手続きによる申し立てが必要で、第一審の判決前にはこの手続きが行われていなかったのです。
視聴者側は東京地裁で敗訴して東京高裁へ控訴後、消滅時効の援用を行いました。これに対し、東京高裁は消滅時効の期間は判決が確定し視聴者がそれに従い受信契約を結んだ時点から計算するため、明らかに消滅時効は成立しないという判断でした。
NHK受信料裁判で時効を認める少数意見
一方で、東京高裁の判決ではNHKが視聴者に請求可能な受信料はNHKが提出した証拠に基づき2006年9月以降と認定。視聴者へは、2006年9月~2014年1月分と5年を超える受信料の支払命令が出ました。この判決を受け、当然ながら視聴者側が最高裁へ上告することとなります。
結局、最高裁大法廷も消滅時効を認めず上告を棄却しました。その理由として、判決はNHKと受信契約を結んだ場合は消滅時効が成立する余地があるものの、NHK側が視聴者がテレビを設置したかどうかの把握が困難なため、受信契約を結んだ視聴者と異なり消滅時効が成立しないこともやむをえないとしています。
ただし、この最高裁大法廷の判断は全員一致ではなく、消滅時効が認められるべきだという少数意見も付与されています。また、最高裁大法廷判決を受けて行われた法律雑誌『ジュリスト』2018年5月号に掲載された座談会で、この少数意見には説得力があると有識者が指摘しています。
ラジオライフ編集部
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