大ブームを起こした「万能CATVチューナー」とは
今は昔の話。テレビ放送がアナログだったころ、ケーブルテレビの有料チャンネルはアナログでスクランブルをかけていました。音声は普通に聞こえるのが、嫌らしい仕組みでした。そんなケーブルテレビのスクランブルを有料契約することなく解除できる「万能CATVチューナー」が一大ブームとなったのです。
万能CATVチューナーが電気街で大人気
ある秋、海外でCATVのスクランブルを突破できるチューナーが、国内では「魔法のCATVチューナー」として3万円ほどでひっそりと発売されました。最初は誰も信じませんでしたが、技術的興味から人柱になる漢が現れ、そのうち某電気街で爆発的に広がりはじめます。
万能CATVチューナーは老舗の専門店でも扱うほどで、今のマスクと同じように入荷したらすぐに売れてしまうぐらいの大人気商品に成長。月1000台は売れたようです。しかし、2か月ほどで規制が入ります。
某協会の職員が1店ずつ訪問しては「公表して裁判する」と脅して回ったので、すぐさま手を引いて万能CATVチューナーの店舗での販売は終了。あっという間の出来事でした。その後もネット通販での販売は続いていましたが…。
万能CATVチューナーは数秒に1回崩れ
この万能CATVチューナーのタネは、「アベンジャーボード」という基板です。RCA映像信号のみを解析して、同期信号の「カス」を見つけて何となく元に戻すことをやっています。
要は、適当に復号して何となく見られるようにしているのであり、完璧に復号しているわけではありません。本当の復号は、音声信号に隠されていた同期信号を抽出して、映像信号に付加させるのですが、安価に何となく見られればいいという需要が大きく、このやり方が普及したようです。
「数秒に1回同期信号が崩れる」という欠点があり、画質を求めるアニメ愛好家などには向いていませんでした。また、腕に覚えのあるマニアは、このアベンジャーボードのみを入手し、CATVの周波数までカバーしているビデオデッキに内蔵したりしたものです。
万能CATVチューナーは画質より安さ
製造メーカーはKorea とChinaで、性能はほとんど変わりませんでしたが、耐久性はKoreaの方が若干優秀。そして、このボードが内蔵された万能CATVチューナーは数種類ありましたが、性能的にはどれもあまり差がありません。
万能CATVチューナーは総輸入元が同じらしくて、出来上がったものを片っ端から日本に引っ張ってきたといわれています。
今だから書けますが、万能CATVチューナーの解像度はなんちゃってS端子だったので、最大400本以下。これを求めるユーザーは、画質よりも安さを重視していたため、安物にシフトしていきました。
なお、商品の底には、日本語で「1年保証」というシールが貼ってあったのが販売店には悩みのタネでした。取り扱い終了後も、マジメにアフターケアしていた販売店もあったようです。
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