AMラジオ廃止でもなぜNHKはAM放送を続けるのか
AMラジオの送信には高さ100m以上の巨大なアンテナが使われることがあります。これは、AMラジオが「中波」を利用するためですが、維持コストがかかるため民放ラジオ局はAMラジオを廃止してより高い周波数を使うFMへの移行を目指しています。しかし、そんなAMラジオ廃止の流れの中でも、NHKは今後もAMラジオを維持する方針で、その理由はどこにあるのでしょう。
AMラジオを廃止するには放送法の改正
NHKの経営方針をまとめた「NHK経営計画」によると、NHKはラジオ放送とBS放送についてチャンネル数を減らす計画です。このうち、BS放送については2024年4月1日に1チャンネルが停波予定で、ラジオについても現在2波あるAMラジオを1波へ減らす検討を行っていますが、AMラジオ放送自体は廃止しない方針です。
AMラジオを廃止しない理由は放送法にもあり、NHKは法律上業務としてAMラジオ(中波)・FMラジオ(VHF)・地上波テレビ・BSテレビ・国際ラジオ・国際衛星テレビの6種類を放送することが定められています。そのため、AMラジオを廃止してFMへ移行するためには放送法の改正が必要ですが、現在その議論は行われていません。
さらに、NHKは放送法上「あまねく日本全国において受信できるように豊かで、かつ、良い放送番組による国内基幹放送」を行うことを目的とされています。仮にNHKがAMラジオ放送を廃止してすべてFMへ移行するとなれば、全国各地にFM送信所を整備しなくてはなりません。
AMラジオ廃止にはNHKは送信所が必要
FMラジオが使用するVHF帯の電波は、AMラジオの中波帯と比べ到達距離が短いため、FAMラジオ廃止でMへ移行した際にはより多くの送信所が必要です。NHKのWebサイトによると、北海道内にあるAM放送のNHKラジオ第1の送信所が27か所、ラジオ第2が18か所なのに対し、NHK-FMの送信所は57か所に上ります。
じつは、同様の事情がAMラジオ廃止が進む一部民放ラジオ局にも存在。北海道の札幌テレビ放送、岩手県の岩手放送、秋田県の秋田放送は、AMラジオ廃止によるFM放送への全面移行は行わない予定です。これは、放送エリアとなる北海道・岩手県・秋田県は面積が広く、AMラジオ廃止によるFM移行で多数の送信所を整備するコストが高いためです。
なお、現在もNHKがAMラジオの番組をFMで放送すること自体は一部行われており、AMラジオの難視聴地域にFM送信局を設置したケースも存在します。また、尾道送信所(広島県)のように海岸沿いにあるAMラジオ局の津波対策として、バックアップ用にFM放送でNHKラジオ第1を送信しているところもあります。
AMラジオ廃止はFM補完放送への移行
そもそも、AMラジオの廃止については、民放のAMラジオ局からの要望を受けて検討されているものです。民放のAMラジオ局は、全局がFMラジオでの同時放送を実施中。FMラジオでの同時放送は「FM補完放送」と呼ばれ、文字通りAMラジオを「補完」するためにスタートしました。
AMラジオをFMラジオで補わなくてはならない理由は、とくに都市部でAMラジオを受信することが難しくなっているためです。FM補完放送が利用する周波数帯は、これまでのFMラジオ局より高い90.1~94.9MHzとなっており、この周波数帯には「ワイドFM」という愛称が付けられています。
とはいえ、AMラジオ局にとってはAM・FM両方の設備を用意することになるため、AMラジオのみ放送する以上にコストがかかります。そこで、大がかりなアンテナ設備が必要なAMラジオは廃止してしまい、「補完」だったFMラジオをメインにしようという動きが2019年から出始めたのです。
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