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ホバリングする陸自のUH-60JAが賞賛された理由

2014年9月の長野県・御嶽山の噴火では、被災者を救助するために陸上自衛隊のヘリコプターが災害派遣。その勇姿がテレビで報道されたところ、ホバリングなどの操縦技量の高さがネットで話題になりました。山の上でのホバリングはなぜ難しいのでしょうか?


ホバリングする陸自のUH-60JAが賞賛された理由


UH-60JA多用途ヘリのホバリング

今回の災害派遣で山頂付近でホバリング(空中停止)し、被災者をホイスト救助していたのは陸上自衛隊のUH-60JA多用途ヘリです。

この機体は群馬県・相馬原駐屯地の第12旅団、空中機動部隊と呼ばれる精鋭部隊の所属機です。自ずとヘリの操縦技量は高くなります。

ヘリは地上目標を頼りに低い高度で飛ぶように設計されています。そのため、空気密度が低い山岳地帯では回転翼による揚力(機体を垂直方向に押し上げる力)の効率が低下、酸素が薄いためエンジンの出力も低下します。そのような環境でホバリングを続けていたのです。


UH-60系のホバリング限界高度

UH-60JAには電波高度計と連動した自動操縦装置によるホバリング高度の維持機能を備えています。これは地上に向け発射される電波の反射波で対地高度の絶対値と降下率を得て、パイロットの操縦操作を支援する機能です。

しかし、UH-60系のホバリング限界高度は9,500フィート(約2,895m)なのです。御嶽山の山頂(海抜3,036m)付近では限界高度を超えているため、海面高度付近と同じ性能を発揮できません。

ヘリの操縦の中でも最も難しいホバリングを機体のサポートがあったにせよ、空気密度が3分の2程度の低い場所で安定して行ったことが神ワザと賞賛された理由です。


火山ガスを警戒しながらホバリング

また、山岳部は特殊な地形に起因する急激な風向風速の変化があります。ヘリは機首を風上に向けていた方が安定しますが、山岳特有の突然の横風や火山ガスの流れを警戒しながらのホバリングはかなりの技量が必要でしょう。

さらにはダウンウォッシュ(回転翼が引き起こす下方向の風)によって巻き上げた火山灰をエンジンが吸ってしまい出力が低下、最悪の場合はエンジンストール(停止)する危険性も考慮しなくてはなりません。

これらの要素を踏まえると操縦技量の高さはもちろん、山岳部の飛行経験が豊富なパイロットと機上作業搭乗員が任務に当たったことが想像できます。再噴火による2次災害の危険をおして行うには、パイロットにはチャンスを逃さない瞬時の決断力も必要だったはずです。

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ラジオライフ編集部

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