「地下放送」に見る朝鮮半島で現在も続く電波戦
地下放送とは、広辞苑などを引用して考察すると「政治的なメッセージを放送する非公式の放送」。地下放送の内容は、対象国の体制批判や反政府活動といった政治的なものだけでなく、本国では放送できない話題・思想・音楽も含まれます。地下放送に見る朝鮮半島で現在も続く電波戦を見ていきましょう。
地下放送と呼ぶのに相応しい放送局
1970年代末期の代表的な地下放送には、朝鮮半島の『希望のこだま放送』『統一革命党の声放送』、中国の『火花』『八一電台』『紅旗広播電台』などが存在。これらはすべて所在地を偽装もしくは明らかにせず、対象国の体制をモロに攻撃し、どれも地下放送と呼ぶのに相応しい放送局でした。
まずは、韓国の希望のこだま放送。1970年代当時から「祖国時間」という表現を用い、「海外同胞総連合」という海外の同胞が祖国に向けて放送する放送というスタンスでしたが、現地調査により韓国からの送信であることが明らかになっています。
2003年に「6・15共同宣言」によって、南北朝鮮は双方の敵対放送を止めることになり、北朝鮮の地下放送はこれに従って放送を中断。しかし、希望のこだま放送は「海外同胞が勝手にやっている」ということで放送を止めませんでした。
この時代は、南北朝鮮からの「乱数放送」も盛んに行われ、また公式放送局でも相手国を露骨に攻撃する内容が放送されていたので、地下放送も現在放送されている番組と比べとても刺激的で聞き甲斐があったものです。
北朝鮮の地下放送が文化放送に混信
北朝鮮の地下放送『統一革命党の声放送』は短波の他に中波帯(1135kHz)も放送され、文化放送の混信源として有名でした。1053kHzに移動すると今度は、中部日本放送を邪魔するようになりました。
その後に、局名を『救国の声放送』に変更。地下放送ならではというべきか、口調は柔らかく韓国の放送のようでした。一部の時間は『平壌放送』でも中継され、この部分は明瞭に聞くことができたのです。
6・15共同宣言での合意に従い、2003年7月31日に放送を終了。ところが、合意に従わない韓国にいらだった北朝鮮は、その後同じ施設を使用して『反帝民族民主戦線平壌支部』という名称で、朝鮮中央放送の中継を開始したという後日談があります。
それから40年後の現在、当時の地下放送も現存するのは、韓国の希望のこだま放送のみとなりました。
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ラジオライフ編集部
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