警察の尿検査による薬物反応はどこまで正確か?
芸能人などが覚せい剤で逮捕される事件がマスコミを賑わせています。そんな報道で目にするのが、警察による尿検査で覚せい剤の陽性反応が出たというもの。中には、覚せい剤が検出されても一貫して否認するケースもあります。はたして、警察の尿検査による覚せい剤の陽性反応はどこまで正確なのでしょうか?
尿検査は成分を分離して化合物を特定
元埼玉県警科学捜査研究員で、現在は法科学研究センターの所長である雨宮正欣氏は、23年間の勤務で鑑定経験は5,000件以上といいます。まずは警察の覚せい剤の検出がどのように行われるか聞いていきましょう。
尿検査の薬物反応というと「違法な薬物に試薬を垂らして色に変化が現れたらクロというような試験をイメージされるでしょうが、違います。それは現場の鑑識レベルで行う簡易的な分析で、科学捜査研究所ではより精密に成分分析を行う」のです。
例えば「尿検査で覚せい剤が出た」と警察が発表したとしましょう。そうなると「その容疑者は100%クロと断言できます。科学捜査研究所では、そこまで正確に分析できる」のです。
「覚せい剤分析には使用前の粉末状の場合と使用後の尿を分析する場合の2通りがあります。押収された粉末を分析するには、『FT-IR』(フーリエ変換赤外分光法)という方法を取ります。物質に当てた赤外線の吸収パターンが、覚せい剤と似た特徴を示すかを見るものです」。
「尿検査の分析は『GC-MS』(ガスクロマトグラフ質量分析)という方法。尿などの代謝物から成分を分離して、質量パターンから化合物を特定(同定)します」。
尿検査の薬物反応で1~2週間は検出
一方で、警察の尿検査で出た覚せい剤反応が、サプリなどによるものだと否認するケースもあります。「覚せい剤というのは、2種類の化合物しかありません。メタンフェタミンとアンフェタミンです。覚せい剤が検出されたというと、この2種類のどちらかが出たということ」です。
「日本の覚せい剤の99.9%がメタンフェタミンです。メタンフェタミン使用者の尿からアンフェタミンも検出されます。ただし、風邪薬やサプリから覚せい剤反応が出ることはありません」といいます。
「唯一、パーキンソン病治療の薬を飲んだ患者の尿からもメタンフェタミンが検出される例がありますが、これは処方薬で記録も残る」ため、普通は所持できるものではありません。
さらに「パーキンソン病治療薬か覚せい剤か見極めることは可能です。その方法は、私が現役時代に開発しました。つまり科捜研の薬物分析技術はそこまで進化」しているのだといいます。
覚せい剤の陽性反応は、使用してからどれくらいで出るのでしょう。「尿検査での反応は使用後、数分くらいで。期間や人によりますが、大体1~2週間は成分が検出されます。3日以内なら必ず出ますね」とのことでした。
■「科学捜査研究所」おすすめ記事
科学捜査研究所の研究員にはどんな階級がある?
科学捜査は鑑識と科捜研とで役割が違っている
DNA鑑定による科学捜査はどこまで進化する?
■「警察」おすすめ記事
駐車禁止を警察が取り締まれない「植え込み」
駐禁をとられても警察に出頭する必要はない
駐車禁止違反は苦手!?注意だけの警察官が増加中
覆面パトカーは大型トラックの前で身を潜める
覆面パトカーが張り込みに使われることはない
覆面パトカーの見分け方は追い抜くクルマの車内
ラジオライフ編集部
最新記事 by ラジオライフ編集部 (全て見る)
- YouTubeを広告なしの国から視聴する裏ワザとは - 2024年11月22日
- NHK受信料のBSのみ視聴で割安な特別契約とは? - 2024年11月22日
- 可搬式オービスの速度違反は15km/h未満は無視? - 2024年11月22日
- Catchyは仕事も私生活も役立つ文章生成サービス - 2024年11月21日
- NHKメッセージ消去の裏技「録画」が通用する理由 - 2024年11月21日
この記事にコメントする
あわせて読みたい記事
違法薬物の隠語でなぜ自転車絵文字がコカイン?
科学捜査の「ルミノール反応」の意外な盲点とは
スマホの文字入力が遅いと感じた時の対処法とは
血痕を調べる「ルミノール反応」で何がわかる?
オススメ記事
2021年10月、ついに「モザイク破壊」に関する事件で逮捕者が出ました。京都府警サイバー犯罪対策課と右京署は、人工知能(AI)技術を悪用してアダルト動画(AV)のモザイクを除去したように改変し[…続きを読む]
モザイク処理は、特定部分の色の平均情報を元に解像度を下げるという非可逆変換なので「モザイク除去」は理論上は不可能です。しかし、これまで数々の「モザイク除去機」が登場してきました。モザイク除去は[…続きを読む]
圧倒的ユーザー数を誇るLINEは当然、秘密の連絡にも使われます。LINEの会話は探偵が重点調査対象とするものの1つです。そこで、探偵がLINEの会話を盗み見する盗聴&盗撮テクニックを見ていくと[…続きを読む]
盗聴器といえば、自宅や会社など目的の場所に直接仕掛ける電波式盗聴器が主流でした。しかし、スマホ、タブレットPCなどのモバイル機器が普及した現在、それらの端末を利用した「盗聴器アプリ」が急増して[…続きを読む]
おもちゃの缶詰は、森永製菓「チョコボール」の当たりである“銀のエンゼル”を5枚集めるともらえる景品。このおもちゃの缶詰をもらうために、チョコボール銀のエンゼルの当たり確率と見分け方を紹介しまし[…続きを読む]