放置車両確認標章を取り除くのはOKでも出頭が必要なケースとは?
「駐車違反ステッカー」と呼ばれている黄色い紙が、フロントガラスに貼られた違反車両を見かけたことがあるはず。正しくは「放置車両確認標章」といいます。とはいえ、放置車両確認標章は違反キップではないため警察へ出頭する必要はありません。しかも、放置車両確認標章は誤記入で免除になるケースもあるのです。放置車両確認標章が貼られていた時にまずすべきこととは何かを見ていきます。放置車両確認標章を取り除く行為は問題あるのでしょうか。
放置車両確認標章は取り除くように注意書き
駐車違反のステッカーは、正しくは「放置車両確認標章」。放置車両確認標章とは駐車監視員もしくは警察官によって貼られる通知ステッカー。ただし、放置車両確認標章は違反キップとは異なるので警察へ出頭する必要はありません。放置車両確認標章とは文字どおり、放置車両であることを確認したことを知らせるものです。
放置車両確認標章が貼られて1週間ほどで、その車両の所有者へ「放置違反金」の納付書が届くので、指定された金額を納めればOK。マイカーであれば「違反者=所有者」なので、放置車両確認標章を貼られた自身が所有者として納付することになります。
放置車両確認標章による放置違反金の金額は、駐停車禁止の場所は普通車1万8000円、駐車禁止の場所では1万5000円。この放置車両確認標章による放置違反金の金額は、警察官に駐車違反の青キップで取り締まられた場合と同じです。
加えて、放置車両確認標章を貼られた駐車違反の場合、形式上は運転者ではなく所有者を取り締まることになり、処分としては放置違反金の納付で終了。放置車両確認標章による取り締まりでは、運転者には違反の点数が付きません。
放置違反金 | 大型車等 | 普通車 | 二輪車 |
駐停車禁止場所 | 2万5000円 | 1万8000円 | 1万円 |
駐車禁止場所 | 2万1000円 | 1万5000円 | 9000円 |
放置車両確認標章の書き損じは除外される
放置車両確認標章を貼られた自動車の所有者は、運転者が警察へ出頭して反則金を納めた場合は、放置違反金の支払いが免除されます。その代わり、今度は放置車両確認標章を貼られた運転者が駐車違反となり青キップを切られてしまう仕組みです。
放置車両確認標章には「登録(車両)番号」として車のナンバー、「違反状況」の欄に「日時・場所・態様」が記載されています。放置車両確認標章は駐車監視員らが持ち歩く違反事項等入力端末からプリントアウトされたものです。
実は放置車両確認標章のナンバーや違反した日時、場所などの書き損じによって、駐車違反から除外されるケースが意外と多いといいます。このため、放置車両確認標章が貼られた時にまずすべきことは記載事項の確認です。
放置車両確認標章で確認すべきこと
実際、放置車両確認標章を印刷する街で見かける駐車監視員には年配男性が多いのが現状。内部関係者によれば、住所の番地やナンバーを時々、放置車両確認標章に間違えて入力するといいます。
その場合は、もちろんその放置車両確認標章の取り締まりは無効。ただし、放置車両確認標章の場所の表記は「◯◯付近」となっており、1文字間違っていたからといっても必ず取り消しになるわけではありません。
このほか、放置車両確認標章の時刻のズレはまれに起こる現象。放置車両確認標章の違反時刻に別の場所にいたことが証明できれば、駐車違反が取り消しになるかもしれません。ただし、その対策として2017年から、駐車監視員が放置車両確認標章を印刷するタブレットに時刻確認を強化した新端末が導入されています。
放置車両確認標章を取り除く行為
その放置車両確認標章を印刷する違反事項等入力端末の新モデルが「NEC ShieldPRO」。2017年から放置車両確認標章の印刷に関連してマイナーチェンジしました。旧製品と大きな違いはありませんが、放置車両確認標章の現在時刻確認のため、5秒間赤い警告画面が表示されないと次の操作へ移れない仕様です。
また、放置車両確認標章で確認すべきことは、警察に出頭しなければならないとは書かれていないということ。じつは、放置車両確認標章には保管しておくとか、取り除いてはならないなどの記載は一切ありません。
むしろ、放置車両確認標章には「運転するときは、交通事故防止のため、この標章を取り除いてください」と印刷されているのです。すなわち、放置車両確認標章を取り除く行為は推奨されているということ。放置車両確認標章は破り捨てても問題ありません。
放置車両確認標章で警察に出頭する
放置車両確認標章が貼られてからしばらくすると、ナンバーから判明した車両の持ち主へ警察から「放置違反金」の納付書が届きます。これを払えば放置車両確認標章に関連する違反処理は終了です。
ところが、そうとは知らず違反者が放置車両確認標章を持って出頭すれば、警察は基本的に青キップを切って駐車違反の「反則金」の納付書を渡さざるをえません。通常は放置車両確認標章の放置違反金と駐車違反の反則金は同額。ただし、放置車両確認標章を持って出頭して切られる青キップの場合は違反点数が付いてしまいます。
放置車両確認標章を持って出頭して青キップで取り締まられると、運転者に付く違反の点数は駐停車違反では3点、駐車違反では2点です。いずれにしても放置車両確認標章を貼られるような路上駐車は渋滞や事故の原因。くれぐれも放置車両確認標章が貼られることのないように、交通ルールをしっかり守りましょう。
なお、駐車違反には放置駐車違反と駐停車違反の種類があります。運転者がすぐ運転できない状態が放置駐車違反、運転者がすぐ運転できる状態は駐停車違反です。放置車両確認標章が貼られるケースは、前者に該当します。
違反の種類 | 場所 | 大型車等 | 普通車 | 二輪車 | 違反点数 |
放置駐車違反 | 駐停車禁止場所 | 2万5000円 | 1万8000円 | 1万円 | 3点 |
駐車禁止場所 | 2万1000円 | 1万5000円 | 9000円 | 2点 | |
駐停車違反 | 駐停車禁止場所 | 1万5000円 | 1万2000円 | 7000円 | 2点 |
駐車禁止場所 | 1万2000円 | 1万円 | 6000円 | 1点 |
放置車両確認標章のナンバーが違う
警察大学校の「研修資料」の監修は、警察庁交通局交通規制課と警察大学校交通教養部で、途中から放置車両確認事務受託法人の大手警備会社(東京都の約7割を受託)も参加しています。この資料は、交通取締課職員や駐車監視員が市民とのトラブルを回避し、放置車両確認標章などの路上駐車の取り締まりを円滑に行うことを目的として作成されたものです。
駐車監視員制度に詳しい事情通にその研修資料の放置車両確認標章の記述を読み解いてもらいました。「放置車両確認標章が貼られても、違反から除外されるケースにはどのような場合がありますか?」という質問に対し、回答は「監視員の書き損じが大半。車両ナンバー・場所・時刻・駐車監視員の名前…」などとあります。
確かに駐車禁止の放置車両確認標章の車両ナンバーが違っていると致命的。また、監視員が都合で別の者に入れ替わったのに、元の名前で端末にログインしたままといった放置車両確認標章の例もあるようです。
放置車両確認標章の取り消し事例
放置車両確認標章に関して「めまいや吐き気、腹痛によりトイレに行ってた場合は?」という質問には「原則、除外されない」とあります。ただし、2012年の放置車両確認標章の事例で「自家用車にて走行中、強い腹痛を催した運転者が、このままでは運転に支障を来すと判断。一般道路脇の店舗前に駐車禁止区域と知りつつ駐車しエンジンを切り降車」と掲載されていました。
2012年の放置車両確認標章の事例では「車両後方へ『トイレ中』『すぐに戻ります』などと書いた貼り紙をし、同店舗へ入り店員に事情を伝え、かつトイレ内から最寄の警察へ連絡をして状況を説明。数分後運転者が車両に戻ると放置車両確認標章が貼られていたが、後日送付された弁明書にて詳細を記載、裏付けの捜査後公判に至ることなく違反が取り消された」とあります。
放置車両確認標章を貼られないために貼り紙までしているうちに、間に合わなかったのではと心配になるところ。警察署の裁量にもよりますが、基本的には命に関わるものであり、きちんと証明できれば放置車両確認標章が貼られても駐車違反から除外されることもあるようです。
放置車両確認標章で警察に出頭しなとNG
なお、放置車両確認標章を貼られたら警察へ出頭しないとNGなケースもあります。それはレンタカーやカーシェアを利用している時に放置車両確認標章が貼られた場合です。
レンタカーやカーシェアの場合、放置車両確認標章を貼られた自動車の所有者はレンタカー会社やカーシェア会社となります。放置車両確認標章をそのまま放置しておくと、レンタカー会社やカーシェア会社に放置違反金納付書が届いてしまいます。
このため、レンタカー各社の契約書(貸渡約款)には、レンタカー利用者が放置車両確認標章を貼られるなど駐車違反をした場合、警察署に出頭して青キップの違反にあたる「交通反則通告制度」の手続きをすること…と記載。つまり、レンタカー利用時の放置車両確認標章に関しては、原則として放置違反金で済ますことができません。
放置車両確認標章で出頭しないと違約金
そして、利用者がこれに反して放置車両確認標章を貼られても青キップの手続きをしなかった場合、別途違約金を取るとも定められています。放置車両確認標章を貼られても青キップの手続きをしなかった場合の違約金の金額は普通車で2万5000円の会社がほとんどです。放置車両確認標章による放置違反金の1万5000円より1万円高く付くことになるのです。
さらに、レンタカーの業界団体「全国レンタカー協会」は、放置車両確認標章を貼られても反則金も違約金も支払わなかった利用者を登録するデータベースを作成。そして、放置車両確認標章の契約違反によってデータベースに登録されると、会員のレンタカー会社すべての利用ができなくなるのです。
なお、レンタカー会社にこの違約金を支払ったあとで利用者が放置車両確認標章による駐車違反の反則金を支払った場合、違約金は全額返却される仕組み。また、放置車両確認標章について違約金を支払った場合には全国レンタカー協会のデータベースに登録されることもありません。
放置車両確認標章は貼られていないとセーフ
ところで、駐車監視員が不慣れな場所だと携帯端末への住所入力に手間取り、放置車両確認標章を貼るのに15分以上かかることもあります。よく取り締まる場所なら放置車両確認標章を貼るのに5分もかかりません。駐車監視員による駐車違反は取り締まりに何分かかろうと放置車両確認標章を貼られたらアウト、貼られていないとセーフです。
放置車両確認標章を一旦貼ったら、ドライバーからどんなに抗議されても、駐車監視員は取り消せません。ただし、放置車両確認標章を貼られていないうちにドライバーがクルマへ戻るとセーフになるのです。
実際、駐車監視員の駐車違反の取り締まりの様子を見ていると、放置車両確認標章が貼られていないうちにドライバーが戻ってくる光景をよく見かけます。状況確認し始めて5分ほどで放置車両確認標章が貼られていない車にドライバーが愛想笑いで戻ってくると、そのまま走り去っていきました。
放置車両確認標章を撮影前に取り除く
このため、駐車監視員は小型店舗の前の駐車違反には放置車両確認標章を貼らずに見逃すケースが多いといいます。監視員の行動が店内から見えるため、放置車両確認標章を貼られていないうちに逃げられてしまうからです。逆に、レンタルビデオ店などの大型店舗の場合は、店外の様子が見えないため、駐車違反の放置車両確認標章が貼られやすいという傾向もあります。
なお、駐車監視員は「違反状況」「クルマのナンバー」「放置車両確認標章が貼られたクルマ」の3枚の写真を証拠として撮影。このうち、どれか1枚でも欠けていると放置車両確認標章の駐車違反の証拠写真として不十分で免除になる可能性があります。
このため、駐車違反の放置車両確認標章を証拠写真として撮影される前に取り除くことでば免除になる場合もあるようです。とはいえ、放置車両確認標章が貼られるような駐車違反は迷惑なだけでなく危険を伴うことがあるもの。交通ルールはしっかり守りましょう。
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ラジオライフ編集部
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