TS抜きチューナーを録画マニアが愛用する理由
地デジ化以降、録画マニアはいわゆる「TS抜きチューナー」という特殊な機材を愛用しています。TS抜きチューナーは家電量販店で取り扱っておらず、基本的にはPCショップやネット通販で入手。TS抜きチューナーにB-CASカードは付属しておらず、設定する際に必要なソフト類もネット上から集めなければなりません。TS抜きチューナーとは何なのでしょう。
TS抜きチューナーと地上波コピー制限
地上波のデジタル放送が開始されると、アナログ放送と比べて圧倒的に美しいHD画質に多くのテレビフリークは狂喜乱舞しました。と同時に、厳し過ぎるコピー制限に愕然としたものです。
2008年からコピー9回+ムーブ1回の「ダビング10」となりましたが、放送開始時はムーブのみの「コピーワンス」だったからです。現在は、地上波や無料の衛星放送がダビング10、有料放送がコピーワンスとなっています。
ダビング10ならまだしもコピーワンスの場合、ダビングしたディスクが読めなくなると、永遠にその番組は見られなくなってしまうのです。何度でも自由にダビングするなどして、バックアップを残したいと考えるのは至って自然な流れといえます。TS抜きチューナーの登場にはこのコピー制限が大きく関わっているのです。
TS抜きチューナーに違法性はない
そんな中、2007年に現れたのが台湾製の「Friio」というUSB接続のPC用チューナー。家電レコーダーの場合、HDDに録画する際は放送波に乗っているCCIというコピー制御情報に反応することで、上述したダビング10やコピーワンス状態で保存されます。
しかし、Friioはそんな放送業界のしがらみに縛られず、このCCIを無視した状態で放送データ(MPEG-2 TS)をそのままHDDに保存できたのです。生データゆえ、コピーや編集も自由自在。つまり、コピーフリー状態です。
これが「TS抜き」と呼ばれるようになり、TS抜きチューナーが録画マニアにとって常識に、そして必携テクニックとなったわけです。ちなみに、TS抜きチューナーは、スクランブルやプロテクトを解除しているわけではないため、グレーであっても違法性はないということで、放送業界に激震が走ったのは言うまでもありません。
TS抜きチューナーを日本メーカー
「コピーフリー録画=TS抜き」によって、ダビング回数の制限から解放されることが分かったものの、Friioは台湾から個人輸入するかたちでの購入だったため、ユーザーは限られていました。
TS抜きチューナーを広めたのが日本メーカーのアースソフトが開発した「PT」シリーズです。2008年に「PT1」、そして翌年後継機となる「PT2」のTS抜きチューナーが登場。PCI-Express接続のTS抜きチューナーカードで、B-CASカードは付属していません。にも関わらず、TS抜きチューナーの入荷情報が流れると、東京・秋葉原では争奪戦が繰り広げられました。
このTS抜きチューナーが人気を博した最大の理由は、今では当たり前になった多チャンネル録画が可能だったからです。このTS抜きチューナーは地デジ×2、BS/110度CS×2の計4番組の同時視聴&同時録画を実現。その上で、コピーフリーだったのですから、このTS抜きチューナーに夢中になったのも分かります。
TS抜きチューナーにUSB接続モデル
その後、2012年に「PT3」が発売されると、TS抜きチューナー市場の盛り上がりは最高潮に。2016年にTS抜きチューナーは生産終了となりましたが、その性能の高さからいまだに需要は高く、Amazonなどではプレミア価格にて取引されています。もしTS抜きチューナーが安価に入手できる機会があれば、伝説となった神機を試してみていところです。
そして、現実的なところでは、これからTS抜きチューナーを購入するなら、PLEX製品ということになるでしょう。PT3の生産終了後も定期的にコツコツとTS抜きチューナーの新製品をリリースし続けており、豊富なラインアップで展開しています。
扱いやすさでいうとUSB接続モデルのTS抜きチューナーがオススメです。中でも、機能と安定性の面から「PX-W3U4」が第1候補のTS抜きチューナー。このTS抜きチューナーは地デジ×2、BS/110度CS×2を搭載しています。
TS抜きチューナーの新製品がリリース
PLEXはノートPCでも便利な小型のUSB接続タイプのTS抜きチューナー「PX-M1UR」「PX-S1UR」を2022年にリリースしています。PLEX製品でmini B-CASカード対応は初となり、別途カードリーダーが不要です。
PLEXのTS抜きチューナー「PX-M1UR」「PX-S1UR」はUSB接続タイプのドングル型ということもあり、持ち運んでの視聴がよりスムーズになるでしょう。ただ、この種の“裏モノ”のお約束として、TS抜きチューナーにデジタル放送の視聴に必須なB-CASカード類は付属していません。
どちらのTS抜きチューナーもmini B-CASリーダーを内蔵。機能的にはサイズのみの違いのため、mini B-CAS変換アダプタを使うことで、無改造でB-CASカードをTS抜きチューナーで利用できます。価格は1,000円程度です。
なお、B-CASカードをカットして使うことも理論上は可能ではありますが、あくまで規約上はB-CAS社からの貸与品なので避けた方が無難でしょう。
TS抜きチューナーとしてはおなじみの構成
最近のテレビ機器は内蔵のACASに切り替わっていることもあり、B-CASカード以上にmini B-CASカード自体、手元に無いケースが考えられます。このへんがこのTS抜きチューナー導入の、ちょっとしたハードルになるかもしれません。
また、TS抜きチューナーの内部構成としてはUSBブリッジに ITE「IT9303FN」、復調ICは東芝「TC90532XBG」、シリコンチューナーは「RafaelMicro R850」(PX-M1URはBS/CS用でさらにRT710)を実装しています。
この2モデルの差異はチューナーの個数のみで、TS抜きチューナーとしてはおなじみの構成。PX-M1URが地デジ×1、BS/110度CS×1で実勢価格が17,380円、PX-S1URが地デジ×1で、実勢価格14,080円となります。
最近では、PC不要のTS抜きチューナーも登場しています。TS抜きチューナー界隈から、まだまだ目が離せません。
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