1970年代末期の代表的な地下放送を振り返る
地下放送とは「政治的なメッセージを放送する非公式の放送」。内容には、対象国の体制批判や反政府活動といった政治的なものだけでなく、本国では放送できない話題・思想・音楽も含まれます。ここでは、日本がBCLブームに沸いた1970年代以降の地下放送について振り返っていきましょう。
地下放送は対象国の体制を攻撃する
1970年代末期の代表的な地下放送には、朝鮮半島の『希望のこだま放送』『統一革命党の声放送』、中国の『火花』『八一電台』『紅旗広播電台』などが存在しました。これらはすべて所在地を偽装もしくは明らかにせず、対象国の体制をモロに攻撃し、どれも地下放送と呼ぶのに相応しい放送局でした。
中国大陸の地下放送では『火花』を始めとした反中国共産党地下局が頻繁に受信できました。火花は19時頃にインターナショナルの演奏で開始。冒頭部分にはジャミングがかかっておらず良好に聞けたものです。「アジア放送研究会」の「中国地下放送動向分析」では、送信地は東シナ海の船上ではないかと推測しています。
そして、一連の地下放送のうち最も傑作なのが偽『中央人民広播電台』。中央人民広播電台の番組「各地人民広播電台連播節目」の録音で始まり、ニュース途中でニセ番組に切り替わるという手の込んだ放送です。
中越戦争開始で発見された地下放送
中国地方局では北京からの主要番組を短波で受信、中継していましたが、誤って敵の放送を中継してしまう事故が発生しており、それを狙ったのかもしれません。
また『八一電台』は、1979年の中越戦争開始のタイミングで発見された地下放送。八・一は中国人民解放軍の創立記念日にちなみますが、こちらはソ連の極東地域から放送されているのでは?といわれていました。
さらに中波の995kHzで出ていたのが『紅旗広播電台』。こちらもソ連極東方向から聞こえており、放送にソ連が何かしら関与していたのは明確でした。
さて、それから40年後の現在、南北朝鮮は相変らず対立状態にあるものの、中台対立は緩和され、黒幕の1つだったソ連は国家さえありません。当時の地下放送も現存するのは、韓国の希望のこだま放送のみとなりました。
■「地下放送」おすすめ記事
地下放送や謀略放送に短波が採用されていた理由
南北朝鮮で繰り広げられた地下放送による電波戦
海外放送を受信するBCLラジオ選びのポイント
■「乱数放送」おすすめ記事
今も届く北朝鮮の乱数放送の「暗号」を読み解く
北朝鮮が工作員に暗号を送る「乱数放送」が再開
■「暗号」おすすめ記事
スマホを買取に出すときは暗号化してから初期化
ランサムウェアで勝手にファイルが暗号化される
ラジオライフ編集部
最新記事 by ラジオライフ編集部 (全て見る)
- 可搬式オービスの速度違反は15km/h未満は無視? - 2024年11月22日
- Catchyは仕事も私生活も役立つ文章生成サービス - 2024年11月21日
- NHKメッセージ消去の裏技「録画」が通用する理由 - 2024年11月21日
- 譲渡されたテレビのB-CASカードは申請が必要? - 2024年11月21日
- エンタメ制限突破に使えるVPNサービスはどこ? - 2024年11月20日
この記事にコメントする
あわせて読みたい記事
テレビ局のVHF帯放送連絡波の受信には2つ問題点
VHF帯放送連絡波はテレビ局へどう割当てている?
マスコミ無線の主力「VHF帯放送連絡波」聞き方
ウクライナ侵攻の影響で海外短波放送が送信縮小
オススメ記事
2021年10月、ついに「モザイク破壊」に関する事件で逮捕者が出ました。京都府警サイバー犯罪対策課と右京署は、人工知能(AI)技術を悪用してアダルト動画(AV)のモザイクを除去したように改変し[…続きを読む]
モザイク処理は、特定部分の色の平均情報を元に解像度を下げるという非可逆変換なので「モザイク除去」は理論上は不可能です。しかし、これまで数々の「モザイク除去機」が登場してきました。モザイク除去は[…続きを読む]
圧倒的ユーザー数を誇るLINEは当然、秘密の連絡にも使われます。LINEの会話は探偵が重点調査対象とするものの1つです。そこで、探偵がLINEの会話を盗み見する盗聴&盗撮テクニックを見ていくと[…続きを読む]
盗聴器といえば、自宅や会社など目的の場所に直接仕掛ける電波式盗聴器が主流でした。しかし、スマホ、タブレットPCなどのモバイル機器が普及した現在、それらの端末を利用した「盗聴器アプリ」が急増して[…続きを読む]
おもちゃの缶詰は、森永製菓「チョコボール」の当たりである“銀のエンゼル”を5枚集めるともらえる景品。このおもちゃの缶詰をもらうために、チョコボール銀のエンゼルの当たり確率と見分け方を紹介しまし[…続きを読む]