デジタル化されたマスコミ無線はどう受信する?
アクシデント系の情報が聞けるのが「マスコミ無線」。デジタル化によって終わったと思われていましたが、デジタル対応機の登場でミゴトに返り咲きました。聞こえてくる情報はまさに百花繚乱。情報収集能力に優れた無線であるマスコミ無線の楽しみ方を見ていきましょう。

マスコミ無線がデジタル化された理由
テレビ局が使うマスコミ無線は、事件現場や災害現場はもちろん、スポーツやイベントなどの生中継現場からの連絡手段として欠かせない存在です。番組制作の裏側が見えるだけではなく、放送されなかった現場の情報を、誰よりも早く手に入れることができることから、人気の受信ジャンルでした。
過去形になっているのは、主用波であるVHF帯の放送事業用連絡無線(以下、放送連絡波)がデジタル化されたため。VHF帯の放送連絡波は、アナログ受信機では聞けなくなったからです。
テレビ局が使う放送連絡波はVHF帯だけではなく、UHF帯の469MHz帯にも割当てがあり、こちらはデジタル化対象外。全体の交信量は少なくなったものの、FM波なのでアナログ受信機で十分に聞けます。
VHF帯がデジタル化された理由は、総務省による周波数帯の再編です。使用者ごとに帯域を決め、狭帯域化(ナロー化)して、チャンネル数を増やして再割当て。そして2004年に、放送連絡波は「実数零点単側波帯変調方式」と呼ばれる、RZ-SSB方式が採用され狭帯域化しました。
特殊な変調方式でしたが、アナログ受信機で聞けるといわれた電波型式です。機能も充実しており、ファックスやテキストメッセージなどを伝送できるものです。
2016年にVHF帯のマスコミ無線が全廃
しかし、音声通信が中心になる放送事業者からは、アナログ波に比べて音質が悪く、無線機本体も重く大きかったため、高い評価を受けることはなく、現場では既存のVHF帯のFM波が使われ続けました。RZ-SSB方式は使用実績がほとんどないまま、多くの謎を残しつつ姿を消していったのです。
そして、RZ-SSB方式の割当て周波数帯に登場したのが、デジタル波の4値FSK方式。そして2016年5月31日にVHF帯のアナログ波が全廃され、放送連絡波の主流はデジタル波に移行しました。
その後、2018年にデジタル無線を聞くことが可能なハンディ受信機が発売され、「無線のデジタル化=聞けない」という図式は既に過去のもの。ハンディ機のアイコム「IC-R30」とエーオーアール「AR-DV10」などで、4値FSK方式のデジタル化した放送連絡波を受信できます。
放送連絡波は、基地局の出力が25~50Wと高い上、アンテナが放送用の鉄塔に設置されるなど条件がいいので、広域で聞くことが可能です。テレビ局の放送エリア内なら、受信できると考えても大丈夫です。放送連絡波の周波数ステップは、狭帯域化した6.25kHzで3.125kHzズレている、少し変わった割当てになっています。(文/サワガニ)
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ラジオライフ編集部

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