キセルの温床「有人改札」が不正乗車を防いだ件
「キセル乗車」とは、途中区間の運賃を支払わずに列車に乗る行為ですが、自動改札機がキップや定期券へ入場記録を入れることで防止できるようになりました。しかし、キセル乗車は後を絶ちません。鉄道イベントでのキセル乗車が一網打尽になった顛末を見ていきましょう。キセルの温床だった有人改札がキセル防止に一役買いました。

キセル乗車に指定券自動券売機を利用
「撮り鉄」とは、写真撮影を趣味とする鉄道ファンのこと。2019年11月に、JR上越線で運行されたイベント列車では、その姿を写真に収めるために、水上駅(群馬県利根郡みなかみ町)の近くにある撮影ポイントには、大勢の撮り鉄が集まりました。
しかし、その中には首都圏からキセル乗車して来る不届きな人間も少なからず存在。彼らが利用したのは、利用日と区間を指定した普通乗車券も発券できる指定券自動券売機(MV端末)です。
彼らはこの指定券自動券売機で事前に、水上駅の1つ手前の無人駅である上牧駅からの初乗り190円キップを発券。このキップで水上駅を出場するというキセル乗車の手口でした。
キセル乗車が有人改札で防止できた
こうしたキセル乗車の手口が使われることが分かっていた水上駅では、キップの乗客はすべて有人改札を通るように変更。さらに上牧駅などの近隣の無人駅に駅員を配置しました。無人駅からの乗車人数を確認し、水上駅へ「乗客無し」を報告していたのです。
この連携によりキセル乗車の一団は一網打尽になりました。キセルの温床にもなっている「有人改札」ですが、今回は有人改札によってキセルを防止することができたわけです。
そもそも不正乗車をキセルと呼ぶのは「煙管(きせる)」が語源。煙管では吸い口とたばこを乗せる部分にのみ金属を使用して中間部分は竹など金属以外の素材を使うことが、中間の運賃を払わない不正乗車と構造が似ていることからキセル乗車と呼ばれるようになりました。