AMラジオ放送局がAM放送を廃止したい理由とは?
2019年3月27日に、総務省の有識者会議が開催され、その席上で、業界団体である民放連(日本民間放送連盟)が、「ラジオの将来に関する要望」の1つとして「FM補完中継局制度の見直し」を出しました。そこには「2023年の再免許時を目途に」「一部地域で」「長期間にわたり停波」と明記されているのです。

看板であるAMラジオを廃止したい理由
民放AMラジオ放送局が、看板であるAMラジオ放送を停波したいと、なぜ言わざるを得なくなったのでしょうか。大きな理由の1つが、収入が大きく減少したことです。2017年度は、ピークだった1991年度の約60%減になっています。
2つ目は、支出の中で大きな割合を占める放送設備、中でも送信設備の保守・維持・更新に伴う費用負担が重くなってきたことです。AMラジオ放送の送信設備は、FMラジオ放送に比べて数倍のコストがかかります。AM波のアンテナは100m級の巨大な鉄柱で、FM波よりも出力が大きい場合が多く、送信機自体も大型で高価です。
今問題になっているのが、送信アンテナの鉄柱の耐用年数。定期的な保守をしていても約50年です。1950年代に放送を始めた開局60年以上のAMラジオ放送局が増えている昨今、多くの局で根本的な更新が必須な状況に迫られています。
NHKは変わることなくAMラジオを継続
それでは、FM波に転換すればAMラジオ放送局は安泰なのでしょうか? 決してそんなことはありません。FMラジオ放送局の売上も減少しているからです。2000年度をピークに、2017年度は約35%減になっています。
民放局の動きを、関係者はどう見ているのでしょうか。NHKは、放送法第20条で中波放送を行うと定められているので、変わることなくAMラジオ放送を継続します。
そして国。これまでの総務省の見解は、「FM補完局の送受信環境の整備が将来的に進んだ場合におけるAMラジオ放送の展望については、代替手段の有無や国際権益確保の観点を踏まえ、慎重に検討を進める必要がある」としていますが、今回の民放連からの要望を受けて、どう判断するのでしょうか。
今回の1件に対して、総務省の有識者会議は、2019年6月から7月に中間取りまとめを行い、2020年3月に最終取りまとめの方向で動きます。このスケジュールで総務省などから、何らかの発表があるので、今後の動向に注目したいところです。(文/掛原雅行)
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ラジオライフ編集部

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