オービスとは?種類や光る速度のほか通知や手続きを解説
「オービス」とは、高速道路や幹線道路でスピード違反を取り締まる自動速度取締り装置のこと。比較的重いスピード違反でないと取り締まらないといわれています。しかし、最近では「移動式オービス」が登場して、青切符のスピード違反も取り締まるようになりました。オービスの種類や光る速度、通知や手続きを解説します。
オービスとは
オービスとは、走行する自動車のスピードを自動で測定してスピード違反車を発見した際にはカメラで自動で写真撮影して取り締まる無人式の「自動速度取締り装置」のことです。通称・オービスと呼ばれてるのは、日本で最初に導入された東京航空計器製の自動速度取締装置の商品名「ORBIS Ⅲ」という製品名に由来しています。
オービスの取り締まりには事前予告看板
オービスの存在を事前に察知する方法としては、警察の警告看板をチェックする方法が知られています。「速度自動取締機設置路線」「カメラによる速度取締路線」「この先 速度取締中」などと記された看板があれば、その先にオービスが設置されている可能性が大です。
プライバシーや肖像権の問題から警察はオービスによる撮影を事前に警告しているといわれています。ただし、必ず設置しなければならないと法律で決まっているわけではありません。
オービスの種類
オービスには現在、さまざまな種類があります。大きくは固定式と移動式に分けられるほか、速度測定方式でもそれぞれ違いがあるのです。
レーダー式オービス
レーダー式オービスはその名の通り、10.525GHzのレーダー波を使って車速を計測する固定式の自動速度取締り装置です。向かってくるクルマに電波を照射し、その反射から車速を計測。違反車両の撮影は、レーダー部奥の路肩や中央分離帯などに設置されたカメラにて行います。
レーダー式オービスは現在は老朽化が進み、全国的には数は減少傾向にあるのは事実。とはいえ、秋田や宮城では現役で稼働しているので、油断はできません。なお、レーダー式オービスはGPS機能のない旧型レーダー探知機でも感知できます。
ループコイル式オービス
ループコイル式オービスは、アスファルト内に埋設された磁気センサーで車速を計測し、その先にある赤外線ストロボとカメラにて記録。ループコイル式オービスの記録部は、路肩や中央分離帯にひっそりと設置されており、周囲に溶け込んでいるため走行中に目視で確認するのは困難です。
ループコイルは、記録部の手前約60mのアスファルト内にセット。溝を切って埋め込まれているため、事前情報なしに目視のみでループコイル式オービスの存在を把握するのはほぼ不可能です。速度違反車両は、その先にある白線部にて撮影されます。
Hシステム
正方形の白い“はんぺんアンテナ”が特徴のオービス「Hシステム」の正式名称は「高速走行抑止システム」です。Hシステムと呼ばれているのは、初めて導入された場所が阪神高速道路だったため。ちなみに、Hシステムが阪神高速道路に初めて設置されたときは丸形アンテナでした。
Hシステムはレーダー式オービスの一種で長年、三菱電機製のRS-2000が設置されています。ところが、三菱電機は2008年にHシステムの製造・販売を終了。2018年にはメンテナンスの終了も発表され、Hシステムは各地で撤去が進められています。
LHシステム
1994年のデビュー以来、年々増加しているオービスが、東京航空計器が提供する「LHシステム」です。いわゆるループコイル式オービスの一種で、撮影ユニットの50m手前のループコイルによって車速を計測。その先に、撮影ポイントとして白線がペイントされています。
3.45mの等間隔で地中に埋められた3本のループコイルは、溝を切って埋め込まれているため、ループコイル式オービスは事前情報なしに目視のみで把握するのはほぼ不可能です。また、レーダー探知機などにも反応しません。
移動式オービス
移動式オービスで注目すべきは、レーザー式の速度測定を採用していることです。従来までの速度測定は「レーダー・ループコイル・光電管」という3つの方式が主流でした。レーザー式はその名の通り、レーザー照射により速度を測定します。
レーザー式の速度測定は、三脚に乗せた可搬式(LSM-300など)や台座に固定された半可搬式(LSM-300HK)などの移動式オービスで導入。このほか、大阪・枚方などに設置された一部の固定式オービスにも採用されています。
可搬式オービス
全国の警察で導入されている「可搬式オービス」は、大きく2種類あります。一方は速度測定にレーザーを用いるのに対し、もう一方は従来からあるレーダー式です。
レーザー式の可搬式オービスを製造しているのは、これまでもオービスの主力メーカーだった東京航空計器です。同社の移動式オービス「LSM-300」「LSM-310」は三脚に立てて使用できます。一方、レーダーを使う可搬式オービスはスウェーデンに本社を持つセンシス社が製造。日本へ輸入されているのは「MSSS」です。
半可搬式オービス
可搬式と半可搬式の移動式オービスにはレーザー式の速度測定機を採用。このうち、半可搬式オービスが「LSM-300-HK」です。東京航空計器のオリジナルマシーンでHKのHは半の「は」で、Kは可搬式の「か」と思われます。すなわち「半可搬式」の略でしょう。上部の撮影部はストロボ・照準用カメラ・撮影用カメラ・レーザースキャンセンサー発射口という構成です。
オービスと間違いやすいNシステムの見分け方
スピード取り締まりを行わない路上カメラの多くは、オービスのLHシステムと似ているために紛らわしいもの。路上カメラには「Nシステム」「Tシステム」「ETCカメラ」など多種多様。LHシステムと最も紛らわしく、ドライバーを混乱させるのが「Nシステム」です。
NシステムとLHシステムを見極める、最も効率的な方法は、LHシステムの特徴を掴むこと。LHシステム最大の特徴は、カメラやストロボが設置された支柱の端にある赤色灯が付いたボックスです。
オービスが光る速度は?
オービスが光る速度違反は、略式を含む裁判が必要な赤キップに該当する違反に限られるといわれています。赤キップで取り締まられるスピード違反は、一般道であれば30km/h以上、高速道路については40km/h以上が該当します。
オービスが光る速度取り締まりが赤キップ限定の理由には、肖像権に関する問題でむやみに警察は人物を勝手に撮影できないことが挙げられます。オービスも警察による人物撮影にあたり、無制限に取り締まることはできないのです。
オービスの光り方
オービスが赤く光ったように見えるのは、多くは対向車線を走り去るクルマのテールランプ。その光がオービスの赤外線ストロボ前面のガラスに反射して光って見えるのです。実際にオービスが発光する時は、もっと強烈に赤外線ストロボが光って見えます。
ただし、原理的には赤外線ストロボは肉眼ではほとんど見えません。オービスは警告のために赤い可視光を発光させているようです。実際、YouTube動画を検索すれば、オービスの赤外線ストロボの光り方を確認できるでしょう。
オービスが光らないケース
Hシステムのオービスは、はんぺん型の両脇に赤外線ストロボとCCDカメラがワンセットで並ぶのが通常です。ところが、よく見ると赤外線ストロボが取り外されていたり、アンテナがなかったり、カメラのケース内が空っぽだったり…。
こうした稼働していないオービスが「ゾンビ」として多数報告されています。とくに、ケースの中身がないゾンビーオービスは、凝視しないと判別できないだけに厄介です。
オービスが光った場合の罰金と罰則
赤キップの交通違反は、前歴なしでも一発で30日間の免停となる重大な違反。その重大な違反の代表例が、時速30km以上(高速では時速40km)の速度違反です。それを取り締まるために利用されているのがオービス。「オービスが光ったら免停」といわれる所以です。
しかし、最近はこの「オービス=免停」という事情が変わってきました。あおり運転や暴走事故の多発により可搬式オービスの導入が進み、オービスでも時速30km未満の軽微な違反(=青キップ相当)でも、検挙されるようになったのです。
オービスの速度違反の反則金 | ||
道路種別 | 超過速度 | 普通車 |
高速道路 | 35km以上40km未満 | 35,000円 |
30km以上35km未満 | 25,000円 | |
一般道路 | 25km以上30km未満 | 18,000円 |
20km以上25km未満 | 15,000円 | |
15km以上20km未満 | 12,000円 | |
15km未満の超過 | 9,000円 |
オービス速度違反の罰金
速度違反の場合は超過速度が30km/h未満(高速道では40km/h未満)だと青キップで、30km/h以上(同40km/h以上)だと赤キップになります。青キップの場合、一緒に交付される納付書で銀行や郵便局に「反則金」を払えば、それで終わり。金額は、超過速度によって法令で決まっています。
赤キップの場合は、反則金の納付書を交付されません。通常は赤キップを切られてから約20日後、いわゆる交通裁判所に呼び出されます。とくに不服がなければ、略式の裁判によりすぐに「罰金」を払うことになるのです。
オービスの罰金の具体的な金額は、主に車種と超過速度によって決まります。例えば普通車で超過30km/h台なら6~7万円です。バイクはそれより1万円くらい低い額になります。ただ、オービスの超過速度がすごく高い場合は罰金では済まされません。正式な裁判となり、被告人として法廷に立たされ、懲役刑を求刑されます。
オービス速度違反の違反点数
速度違反をすると行政処分のための違反点数が付きます。免許を取得した時はゼロ点。違反の種類によって点数が付加されていくシステムです。その点数が一定以上累積すると、免許停止や取り消しなどの行政処分が下されます。
例えば、一般道で時速15キロ未満の速度オーバーは1点、30キロ以上50キロ未満の速度オーバーは6点が付加されます。そして、違反点数とは別に交通違反の内容に応じた反則金や罰金を支払うなどの刑事処分が違反者には下されるのです。
オービスが光った後の流れ
固定式または移動式のオービスの場合は無人式の速度違反の取り締まりのため、現場で行うのは測定と撮影だけ。写真にはクルマのナンバーと運転者が写り込んでおり、測定値が自動的に焼き付けられています。
オービスの場合、呼び出しの通知はナンバーから判明したクルマの持ち主へ届きます。すなわち、オービスは違反者(たいていは所有者自身)を警察署へ呼び出して違反キップを切るのです。
出廷通知書が届く
オービスが光った撮影から通知が届くまでの期間はさまざまです。7日以内に警察署から呼び出しの通知が郵送されることもありますが、一般的にオービスが光った後7~14日で警察から呼び出しのお知らせ「出頭命令通知」が届きます。
オービスの通知が7~14日後に送付される先は、ナンバー情報から調べた住所、つまり違反車両の所有者宛て。出頭先は、原則としては撮影したオービスを管轄する警察署となります(変更可能)。
簡易裁判所から略式命令
オービスによる速度違反では、80km/hオーバーといった大幅なスピード違反でない限り「略式裁判」という手続きで進むことがほとんど。略式裁判とは、数ある犯罪のなかでも罪状が軽いものについて裁判手続きをスムーズに進めるために設けられた仕組みです。
略式裁判の対象となるのは、簡易裁判所に起訴された事件のうち検察官による求刑が罰金100万円以下となる場合に限られ、禁固刑以上を求刑する場合は適用外となります。
略式裁判では、被疑者が裁判官に会うことはありません。被疑者が検察庁で取り調べを受けると、その証拠のみが簡易裁判所へ送られ、裁判所は書面の審査のみで罰金の額を決めたうえで、被疑者には後日「略式命令」という書類が送られてくるという流れです。
オービスの通知が届かないことはある?
クルマの持ち主ではないレンタカーを運転中にスピード違反でオービスが作動した場合はどうなるのでしょう。オービスのスピード違反の呼び出しはクルマの持ち主に届くシステムです。
しかし、レンタカーだからといってオービスのスピード違反からは逃れられません。警察は、レンタカー業者から契約者情報を得られるので、呼び出しのお知らせ「出頭命令通知」がちゃんと自宅に届きます。
警察が立件しないケース
オービスに関して、10年以上前は速度の誤測定を主張して争う裁判がよくありました。その裁判に「オービスの専門家」として証人出廷したメーカー社員が、こんな証言をしたことがあります。
オービスで「違反車両が写真の真ん中から大きく外れ、隣の車線との間の白線を跨いでいるような場合、警察が立件しないこともあるようですね」。
オービスを回避する対策いろいろ
運転中に気を付けたいのが、無人式の自動速度取り締まり装置、いわゆる「オービス」によるスピード取り締まりです。制限速度を守って安全運転第一で運転するのは当然ですが、クルマの流れでついアクセルを踏み過ぎてしまうこともあります。オービス設置の有無を事前に察知する方法を知っておきましょう。
オービスの設置場所を把握する
「オービスガイド」を始めとするオービス情報サイトのほとんどが、オービスの位置情報を示すのにグーグルマップを活用しています。この場合、商業利用にあたるのでグーグルマップの使用契約が必要です。
また、ネット上には「東日本高速道路オービスマップ」「西日本高速道路オービスマップ」という労作も公開されており、スマホのグーグルマップアプリで「マイプレイス」→「マップ」で読み込めば、スマホでも確認可能です。
オービスアプリで取り締まりを検知
オービスガイドは、全国のオービス情報を網羅する情報サイト。現地調査による最新の取り締まり情報を随時更新しており、信頼性が高いことで知られています。この有名サイトが提供するレーダー探知機と同様の機能を持つオービスアプリが「オービスガイド」です。
このオービスアプリはオービスを600件以上、ナンバー自動読取装置「Nシステム」を2,000件以上、警察官が待ち伏せして速度違反を取り締まる「ネズミ捕り」を1,500件以上、検問を1,000件以上を収録。オービスアプリは、撤去済みのオービスが速やかに削除してあります。
レーダー探知機を設置する
GPSレーダー探知機は、レーダー式オービスやHシステム、レーダー波を使ったネズミ捕りはダイレクトに察知。直接察知できないループコイル式オービスやLHシステム、光電式のネズミ捕りはGPSデータで対応しているわけです。
ただし、オービスは固定されていますが、ネズミ捕りの場所は神出鬼没。過去にネズミ捕りが行われた地点を登録して、取り締まりの注意を促しています。このため、GPSレーダー探知機はネズミ捕りをすべて察知できるわけではありません。
オービスについてよくある質問
半固定式オービスにはどんな特徴?
2021年から阪神高速に登場した半固定式オービスは、基台を路側帯に土木工事で固定したうえで、電源もバッテリーではなく電力会社から配電を受けるため固定式。さらに、半固定式オービスが撮影した画像も電話回線を使い中央装置へリアルタイムに送信する仕組みです。
基台・電源などが固定式なのに半固定式オービスと呼ばれるのは、取り付けるオービス・LSM-310を移動する運用が行われるため。阪神高速の半固定式オービスの場合、基台などの設備は3か所に設置され、1台のLSM-310をローテーションさせスピード違反の取り締まりが行われているのです。
レーザー式の小型オービスがある?
北海道苫小牧市に設置された小型オービスの「LSM-100-K」は、2018年7月上旬の取材時には、奥にあるHシステムともども健在でした。そして、状況から見てどちらも稼働していると思われます。
ちなみに、手前の道路のアスファル下に埋まっているループコイルからの配線が、LSM-100-Kまでつながっていました。レーザーとループコイルを同時にテストしているのでしょうか。
オービスに誤測定はあるのか?
オービスのスピード違反では「そんなスピードは出してない」と争うケースがあります。そのとき、裁判では検察は測定値の信用性を、メーカーの社員を証人として呼び出して証言させるのです。
「測定の誤差はございます。誤差の範囲はプラスマイナス2.5%です。そこで、生のデータに0.975を掛けたものを測定値とし、かつ小数点以下を切り捨てます」と証言します。この説明が意味するのは、オービスのスピード測定値は実際の速度と同じか、最大で5%低く、かつ約1km/h低く表示されるということ。プラス誤差は絶対に出ないと証言しているわけです。
オービスの速度違反は逃げ切れる?
オービスで撮影された写真には、速度違反車とされるクルマの全体がやや斜めから写っています。写真はモノクロですが、ナンバープレートもフロントガラスの内側もきれいに収められているのです。
また、クルマ全体の写真の他に、ナンバープレートや運転者の顔部分を拡大したアップ写真が添えられる場合も…。加えて、そこには年月日、写真番号、制限速度、測定値などのデータが焼き付けられているのです。
ラジオライフ編集部
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